400ミリ断熱時代の可能性を求め 広尾の住宅

近年、真冬にセントラルヒーティング暖房の不調の相談を受け、暖房工事業者さんに調整、修理の依頼をするのですが、人手不足のため敏速な対応ができないことが頻繁にあります。

特に地方では深刻で、地域によっては実質真冬の緊急対応はできないことも現実にあります。そこで2019年からセントラルヒーティング依存を意図的に減らす傾向になり、2020年はその傾向をより明快にしています。

2021年に至っては数件がオフグリッド暖房となる予定です。ここで重要なのは断熱性能と暖房の配置についてです。

今回引き渡した十勝南端の町 広尾町の酪農家の住宅について

主となる暖房は玄関の薪ストーブと補助的に床下に温水パイプを外周周りに這わしています。お風呂など水回りは玄関薪ストーブの裏側にあり煙突は浴室にむき出しで放熱されるようになっています。リビングダイニングはフームの定番で2階にありストーブからの対流により温まる計画です。

断熱は外壁、屋根とも385ミリの高性能グラスウールによる外側断熱です。熱交換換気を使用しなくても熱損失量は極めて少なくピーク時で暖房に必要な熱量は3000Kwくらいではないかと思います。もちろん生活や換気の選定で±15パーセントくらい出ますが。これだけの高い断熱にかかる材料費、人件費がかかりますので、それだけのメリットを生まなくてはなりません。

正直 燃費で元を取るには住まい方により大きく異なりますが、20年から30年かかるかもしれません。ただ確実に減るだろうこと、機械ではないので断熱に故障はないということ。
しかし最も重要なことは、外壁の表面温度が1℃程度は上がるということ。暖房を止めてからの温度低下が極めてゆっくりになること。それらの効果により体感温度が上がり、設定温度を1から2℃下げられる。(たかが12℃とお思いでしょうが消費エネルギーは10パセント程度は減ります)

するとその分、湿度が上がり乾燥感が減ります。この辺の効果が相乗的に表れることを狙っています。

設計のポイントですが、薪ストーブや石油ストーブによる一台暖房はこれまでも試していて結構好評ですが、下階の個室、特に浴室など水回りに熱が回りにくくなります。結果的に半年後夏にカビが生えやすくなったりします。
この点の解消が、高断熱とともに、これからのオフグリッド暖房のポイントだと思います。