ギャラリー
高台の平屋

屋根なりの天井で室内空間を最大限に活用。床から天井までの高さは、一番高いところで3.4m、低いところで2.4mほど。水平方向の視界が広いので、窮屈さはまったく感じない。窓は主な用途が明確化されており、右端が通風用、その隣の2枚は採光用、左端は庭への出入りのためのもの

玄関を入るとまず広い土間。建物の住宅性能を高めているので、間仕切りのないオープンな空間でも家全体が暖かい。土間に蓄えられる熱も室内環境の快適性に一役買う

土間は室内として扱い、右に子ども部屋、左に寝室がある。冬は蓄熱により暖かく、夏はひんやりと心地よい

リビングと奥の寝室は収納で間仕切っている。天井付近を開放して奥行きを出し、ゆとりを生んでいる

鬱蒼としていた敷地の裏側は採光のため少しだけ間伐し、木は薪ストーブの燃料に。窓の向こうには、函館の街と空が遠くまで見渡せる

家の中心にどっしりと構える大黒柱。この先何十年と新たな持ち主たちを見守り、家族の思い出が刻まれていくのだろう

寝室。だんだんと天井が低くなっているが、寝ることが主となるため、むしろ落ち着く空間

木、レンガ、石こうの塗り壁など、月日とともに緩やかに味わいが深まる自然の素材を用いた室内。キッチンも既製品ではなく、製作とすることでコストも抑えられている

施工を担当した原田組が保管していた波板ガラスが正面トイレのドアに使われたり、古い板材がキッチンの飾り棚に使用されたりと、古いものと新しいものがうまく共存している

木々が繁る傾斜地に向かって開口を設けた浴室。天井と壁の仕上げにヒバ材を使用している

9m×10mの正方形に近いフロアを持つ、コンパクトな平屋。この地にもともと建っていた家も平屋だったそうで、手前にも家がある密集地のため、圧迫感を与えない形態となった

Mさんと談笑する設計者の高田さん。奥に見える家が、この土地をMさん夫妻に紹介した方のお住まい。設計事務所が同じ2棟は、外装に道産のマツ材を使い、緑豊かなエリアにしっくりと溶け込んでいる
DATA
北海道函館市・Mさん宅n家族構成/夫婦、子ども1人n構造規模/木造・平屋建てn敷地面積/428.92㎡(約129坪)n延床面積/91.09㎡(約27坪)
COMMENT
敷地は緑の豊かな函館の高台。路地の突き当たりで車通りが少なく、庭先で世間話をするような昔ながらのご近所付き合いのある場所であるため、子育てのしやすい環境だと考え、依頼主はこの土地を選びました。nn建物のプロポーションは敷地とその周囲の印象に大きく影響します。このエリアは道が狭く住居も密集していますが、軒の低いこの平屋は圧迫感を与えない慎ましい佇まいで、空の見え方、周りの木の葉の揺れ方も建てる前と変わりません。隣のお宅と景観も調和し、親子のようにその土地に馴染んでくれました。nn室内は廊下や階段がないため、27.5坪でも狭さはまったく感じません。平屋でありながら窓から木々や街並みを見下ろすことができるのは、この敷地ならでは。建物の外形をそのまま感じられる一体的な室内空間で、熱や空気の淀みも極めて起こりにくい状態です。夏は深い軒で涼しく、冬は薪ストーブの火を囲み、家族が同じ意識の中で暮らす。設備はローテクなものを使い、エネルギーは極力使わず、自然でシンプルな暮らし方を提案しました。