ギャラリー
オープンな空間の中に見えない境界をつくる

緑の中で存在が際立つダークトーンの外観。外壁はスギの板をビス留めにし、破損した場合の張り替えも簡単に行えるようになっている

アプローチからダイニング、窓の向こうの木々を一望。窓は大きいが高台であるため外からの視線はいっさい気にならない

オープンカウンターのキッチンとダイニング。右奥にあるリビングの床面を1段低くしただけで、空間にメリハリが生まれている

最高の眺望を満喫するためにダイニングの外には広いバルコニーを設けた。眼下には川辺の遊歩道が見える

川の対岸から望むと、Sさん宅は川面よりかなり高いところに位置しているのがわかる。平屋にはこういった自然条件を意識した設計も重要になる

シンクまわりもカウンターも地元の職人の手で製作。壁面のレンガは油との親和性があるため汚れが目立たないという

リビングはSさん宅の特等席。ダイニングよりも川方向に張り出しており、座卓を置いて床に寝そべって風景を眺められるようになっている

空間の仕切りはないが、段差や柱の配置など視覚的に変化をつけることで「境界」が生まれている

長方形の敷地の再奥に建物を配置。道路からのアプローチに植えられた木は成長に従って森の様相を成すだろう
DATA
岩手県花巻市・Sさん宅n家族構成/夫婦40代、子ども3人n構造規模/木造・平屋建てn延床面積/120.91㎡(約36坪)n<主な外部仕上げ> 屋根/アスファルトシングル、外壁/スギ材(荒木+オリンピックステイン塗)、建具/玄関ドア:木製ドア、窓:木製サッシ(Low-E・トリプルガラス・アルゴンガス入)n<主な内部仕上げ> 床/SPF 2×8材、壁/SSプラスター+藁入、天井/スギ材(オリンピックステイン塗)n<断熱仕様 充填断熱+付加断熱> 基礎/スタイロフォーム(3種)75㎜、壁/グラスウール24kg100㎜+50㎜、屋根/グラスウール24kg200㎜n<暖房方式> パネルヒーター
COMMENT
北上川沿いの高台に位置する200坪の土地。クライアントご夫妻は雄大な流れを俯瞰する立地条件を生かし、平屋という選択をしました。アプローチはあえて長くとり、「雑木林を通って家に入る」というストーリーで植栽や敷石を配置しています。nn室内はLDKと主寝室、子ども部屋というシンプルな構成。平屋は階段を必要としない分空間は広く取れますが、個のスペースはつくりにくいため、プライバシーが適度に守られるようにいくつかの境界をつくっています。ダイニングとリビングに段差をつけることで目線を変えたり、配置をずらしたり目線の先に柱を置いたり、オープンでありながらも緩やかに仕切られるようにプランしています。nnビス留めの床や麻フェルトを張った天井、レンガを積み上げたキッチンの壁に、大工の手刻みによるカウンターや家具類など、いつものことながらできるだけ既製品を使わない家づくりをしています。