
一人はニューヨークから帰ってきたジャズピアニスト。実はその御高名は以前からジャズ好きの友人から聞いていたので驚いた。コロナでライブ活動が自由にできない今、古民家を購入して、そこに1900年代ニューヨークスタンウエイのピアノを置いて演奏するのだと。早速見に行ったら失礼ながらいつ崩壊しても不思議でない廃屋だった。まず自然樹を加工していた男が彼に床板材を売った因果で、ボランティアで床板を張る羽目になったが、参加者皆楽しそうに作業していた。
建物の改修の話があったのだが大体芸術家というものやたら要求が多い、面倒なのに金払いが悪い、クライアントとしては最低というのが定番。しかしいつものごとく逃げ遅れた。まずはテントレベルに断熱がなく、かついつ崩壊してもおかしくない脆弱な構造を何とかしなくてはならない。そこで建物を丸ごと外から構造を固め厚い断熱ジャケットを着せてしまう外断熱を決行することになった。

もともと築年数が不明で少なくとも50年は経っている素人が廃材を集めて作ったようなあばら家で屋根は雨漏りのせいか、もとの屋根の上に板金屋根が乗っている。「いつ崩壊しても不思議ではない」といったものの60年くらいの年月を耐えたのだ。このような民家は実は今でも多くはないが存在し不思議に崩れた話は少ない。かって古民家鑑定士を名乗る怪しい女性が仕口(木材のジョイント)がゆるゆるなので免振構造になって崩れないのだと言っていたが全く根拠はない。




こちらも高性能グラスウール105mmをダブルで充填する。



もとの壁の位置は窓の外側、その外側に断熱材210mmに通気層と杉板を張って合計280mmくらい外側に太った。

建物の外皮熱還流率Ua値は0.28W/m.K。現在の北海道の省エネルギー住宅の基準0.4であるから今日としても改修としてはなかなかなもの。クライアントの彼は素晴らしピアニストでアーティストであるが同時に、芸術家と自覚する人の多くに見られる人柄と全く違ってなかよくなれ、ホットしている。

ということで何とか無事に年内の工事が終了しました。